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「ヴァンパイアレイン」レビュー

「ヴァンパイアレイン」の超個人的視点でのレビューです。
勘違いや思い込みで書いている部分があるかもしれません。
また、かなりの想像で書いている部分もあります。
文中にはネタバレがいっぱいです。ご注意ください。


このゲームは「限定されたゲーム」ではないかと思います。
およそ、あらゆることが「限定」されています。
主人公(プレイヤー)たちはNWに支配された街で、常にその行動を限定されながら活躍していきます。
NWどころか、普通の人間に見つかっても警告状態になり、NWに見つかればほとんど「即死」の世界。街中にウヨウヨいるNWを1ステージですべて倒す術はなく、ロイドたちは常にこそこそ隠れながら、行動を「限定」されながら作戦(ゲーム)をこなさなければなりません。

その作戦をこなすルートは、ほぼ一本道です。
これはプレイヤーもほぼ「限定」されていると言えるでしょう。
これを面白いと取るか面白くないと取るかで、プレイヤーのこのゲームの評価は真っ二つに分かれます。
実は、このゲームを遊ぶプレイヤーも「限定」されているのです。

それはおぞましいパッケージを見れば一目瞭然かもしれません。
どう考えても、あの「グロ」そのもののパッケージに一般性があるようには見えません。
あのパッケージを見て手に取ることすらしなかった人もいるでしょうし、パッケージを見て買うのをやめた人もいるかもしれません。
パッケージの時点で、すでにこのゲームはプレイヤーを限定しているのです。
キャッチーさと完全に無縁なあのパッケージは、そのままゲーム内容にも当てはまります。
ゲームをプレイした人の評価が賛否両論なのが、それを見事に表していると言えるでしょう。

ステージクリア型のゲームですが、ステージをクリアするたびにアイテム類はリセットされ、中には武器がひとつもない状況でスタートしなければならない場合もあります。
拾える武器はゲーム中にはほとんど意味がなく、限られた中で、限られたルートを進んでいかねばなりません。
ゲーム性を重視したためのリアリティの無さが、プレイヤーの評価を分けます。

その分、ストーリー性は濃密だったと言えるかもしれません。
主人公たちは作戦を遂行しても困難な状況に追い込まれ、やがては孤立無援になります。
その状況下でも諦めず、もはや私闘と化して、主人公たちはNWとかつて所属した組織を追います。
このどんどん追い込まれていく緊迫した展開・先の見えない不安定さは、プレイヤーを引き込んでいきます。

そして、様々な立場のキャラクターたち。
彼らとて、一般性に魅力があるとは言い切れません。
その多くは謎に包まれ、曖昧さを残しています。
彼らに魅力を感じるのは、ゲームを楽しめた者たちだけかも知れません。


ここに、個人的なキャラの感想を書いていきます。

「ジョン・ロイド」
私は彼こそ謎のキャラクターだったような気がします。5年前のNW襲撃事件時にただ一人だけ
生き残れたのはなぜなのか?
高次固体であるジェームズと相対しながら生き残り、さらに5年後にはそのジェームズを含めた
5人もの高次固体NWを次々と葬るその能力は、通常の人間のものなのでしょうか?
私はゲーム中、彼は新種のNWなのではないかとさえ思っていました。
さらに、彼のNW抹殺の意図は何だったのでしょうか?
ケリーやディクソン大佐の恨みに似た、自分が所属していた部隊を全滅させられたため、でしょうか?
それとも、ハンクのように使命感から、あるいは正義感からなのでしょうか?
エンドムービーで、彼はNWのボス・へスラーに銃口を向けながら、引き金を引かずに立ち去ります。
しかし、AIB本部からの連絡を途中で切った彼は、次の夜更けまでの時間をチェックします。
果たして彼は、この後もNW殲滅を考えているのでしょうか?
AIBに残るのか、それとも個人としてNWと戦うつもりなのか?
彼の行動・目的自体が謎そのものだったと思えます。

「ハンク・ハリソン」
彼に共感し、漢泣きしたプレイヤーは多いことでしょう。チーフとして、実質的にストーリーを進めていたのはこの男ですし、あのラストは実に印象的でした。
このゲームの本当の主人公は、ハンクだったのではないかと思えるほどです。
私は途中(ハンソンが死んだあたりから)、ハンクはNWになってしまうのではないかと思っていました。あの風貌でNW化してロイドに襲い掛かってきたら、それはインパクトがあるだろうな、と思ったのです。
その予想は半分当たってほとんど外れました。
おそらく、制作者たちもプレイヤーにそう思われることを予知していたのではないでしょうか?
その裏をかくようなハンクの最期は、実に印象的にプレイヤーの心に残ったはずです。
また、ハンクは何度か、ロイドに個人的なコールをしてきます。
それがプレイヤーに、ハンクを身近に感じさせる要素になっているようにも思えます。
「お前はあの子を知っているのか?」(英語ではこう言ってると思う)
ハンクはロイドに、度々見かけた黒い少女のことを尋ね、自ら話をやめます。
彼は少女の、何を気にしていたのでしょうか。

「クレア・ケリー」
女性キャラクターであるにも関わらずどこか棘のあるケリーは、終盤でその棘をロイドたちに
振りかざします。
彼女の「裏切り」は、ディクソン大佐と同じ「家族をNWに殺された恨み」から来ています。
説明書にも書いてあるこの事実は、その棘がロイドにではなく全力でNWに向けられていた、という納得を持たせます。
とある面で、警備室に侵入するロイドに彼女は言います。
「NWなら殺さなきゃね」
何気ないセリフの中に、途方もないNWへの恨みが潜んでいることに、この時点で気づいた人は果たしてどれくらいいるのでしょうか。
しかし、ケリーの末路があっけなく、また曖昧になってしまったことは残念です。
ハンクが言った、「俺はチームになった者は殺さない」というセリフは、あるいは海外事情を考慮したものだったのでしょうか?
いずれにせよ、ケリーがどうなってしまったか描かれなかったのは残念です。
ディクソンが「心臓発作」でいなくなったのですから、AIBでの彼女の立場も危うくなります。
ロイドの行動次第になるのでしょうが、果たしてハンソン殺害犯として追われる身になるのか、それとも素知らぬ顔をしてAIBに戻るのか…。
もし続編があるのなら、今度こそロイドと対決するのでしょうか。

「デュエイン・ハンソン」
彼は思い切りパシリキャラだったと言えるでしょう(笑)。
常に指揮車でバックアップする役柄になってましたが、公式HPのサイドストーリーを読むと、意外や抜け目のない男だったとわかります。
そんなハンソンがあっけなく死んでしまったのはショックでした。
このハンソンの死はハンクに味方に裏切り者がいると気づかせるのですが、なるほど、彼の死だけはゲーム中に出てくる他の死のイメージとまったく違っていることがわかります。
ケリーに殺害された彼の死は、彼自身の悲惨さよりも、ケリーの恐ろしさを浮かばせます。
しかし、それすらあまり表現されていないことが、何となく彼の幸薄い人生を象徴しているような
気もします。
あの、エドワード戦前に紫外線地雷を持ってきた時のハンソンの笑顔、あれは彼の死のフラグが立った瞬間だったのでしょうか。

「フォーレイ教授」
謎を残したままAIBに連れていかれてしまった教授。
彼が出そうとしていた結論は、果たしてどのようなものだったのでしょうか。
私は最初、NWはありがちな、軍が兵器として開発してたとかなんじゃと思っていましたが、それはヘスラーの存在によって打ち砕かれます。
数千年前から生きる自然発生したヴァンパイア、これが彼らの始まりなのでしょうか?
人間を襲って仲間にする、子供を作ることはできない、このふたつの事実から導かれる答えとは
何なのか?
ロイドが言った、答えを出すためのもうひとつの要素とは何なのか?
このゲームが「謎のままで終わった」とする最大の要因が、フォーレイ教授が答えを言わなかったことから来ているのでしょう。
実際に、謎は謎のままです。
私は、まず間違っているであろう答えのひとつとして、NWは人間の進化した姿なのではないか?と考えました。
人間がすべてNW化すれば、人口がこれ以上増えることもなくなり、様々な問題が解決される…その上での人間の進化であるとしたら…。
不死の存在である彼らは、「死」という問題からも解決されます。
しかし、ヘスラーとチャールズたちの微妙な関係を見てもわかるように、いずれはNW間での争いが起こってしまうのかもしれません。
新しい種を残せない彼らにとって、それは滅亡への道を歩むことと同じになります。
果たして、フォーレイ教授の出した答えはなんだったのか?
このゲームでもっとも気になる「謎」です。

「ディクソン大佐」
彼は「NWに家族を殺されて恨みを持ってる」で完結しているキャラクターです。
これだけで彼の暴走は説明できますし、ケリーとの関係も同じです。
OPムービーにしか出てこない大佐ですが、その暴走の過程がロイドたちを苦しめます。
「心臓発作」で死んだとロイドに説明されますが、それは公式HPのサイドストーリーを読むとわかる通り、「暗殺された」という意味です。
結局、暴走が死を招いてしまったということですが、実はゲームを盛り上げた最大功労者だとも言えるでしょう。

「エドワード」
彼はいかにもボス(しかも中ボス)といった風情で、しかもどう見ても乱暴者キャラです。
ショットガンがよく似合う時点で、最初のボスとして葬られる運命にあると言えるでしょう。

「ジェームズ」
エドワードとよく似たイメージの男ですが、より不気味な感じです。
硬派なのかと思ったら意外に変質的であり、その余裕が彼に死を招きます。
あんな簡単な作戦に引っかかって死んだボスというのは、ゲーム史上にあってもそうそういないかもしれません。

「マーガレット」
退廃的なムードのこの女性NWは、あまり印象を残しません。
唯一、ロイドたちに銃を向けられても我関せずで振舞う姿が不気味だったというくらいでしょうか。
マシンガンで攻撃してくるあたり、ナチの女性将校みたいな(そんなのいたのか知りませんが)感じがします。もっといろいろ魅せてほしかったキャラクターですね。

「チャールズ」
あの第三段階の攻撃方法が妙に印象的なNWですが、実質的なラスボスとも言える凝ったステージと仕掛けは、なかなか面白かったです。
独特のキャラクター性も印象に残ります。
NWのイメージは、彼のボスであるヘスラーよりもチャールズの方が強いと言えるでしょう。
彼が夢見たNWが支配する世界、その世界が実現していたら、果たしてNWはどうなっていたのでしょうか?

「モ二ーク」
モ二ークは唐突すぎるキャラだと言えるでしょう。
チャールズ戦であれだけ盛り上げておいて、いきなりのモ二ーク戦は唐突です。
しかも、あっさりと倒れてしまう。
ロイドに倒されるためだけに存在したかのような印象を受けます。
へスラーの回想ムービーでの、幼少時の彼女は印象的ですが、成長した?彼女はあまり印象には残りません。
へスラーの意思にそぐわないチャールズに向かってナイフを抜いた時点で、彼女の死は決まっていたのでしょうか。
ヘスラーへの献身が、モ二ークを破滅へと追い込みます。
モ二ークのあっさりとした末路は、エンドムービーでのヘスラーの横に立つ女性…つまり、幼少の頃のモ二ークの代わりが存在した時点で、決まっていたのかもしれません。

「へスラー」
彼の意図も謎です。数千年を生きる、自然発生したヴァンパイア。
彼はもはや人間への敵意を失っており、その実権も半ばチャールズたちに引き渡しています。
「もう彼らの時代だ」
そう言うヘスラーは、教授の実験結果の何を恐れたのでしょうか?
NWが世界を支配する=人類とNWの破滅なのでしょうか?
「あの峰を越えれば、ヴァンパイアの暮らせる世界がある」
そう思いながらも峰を越えられなかったへスラー。
人間社会で、彼は大富豪として世界に君臨します。
彼にとって「峰」とは何だったのか?
「人間は峰を越えることができるのか」
そうつぶやく彼は、何を思っていたのか。
凍るワインを前に、何をチャールズに言いたかったのか…。
彼に関しては謎だらけです。
モ二ークの死を目にし、いやむしろモ二ークを倒して自分の前に来たロイドを目にして、彼は死を覚悟します。
しかし、ロイドが撃たなかったことで、彼の運命は続きます。
そして、彼の手をモ二ークに代わって握る黒い少女。
へスラーは今度こそ、「峰」を越えることができるのでしょうか。

「エミリー」
オルゴールを手にした謎の黒い少女、彼女がこのゲーム最大の謎だと言う人も多いでしょう。
その正体は?
まず、人間だった頃?の彼女の正体ですが、オープングムービーを見ると「フォーレイ教授の娘」ということになっています。
NW襲撃事件があってAIBに保護されたはずなのですが、5年後、なぜか度々ロイドの前に現れます。
どうやらハンクの前にも現れていたらしく、ひょっとするとケリーやハンソンの前にも現れていたのかもしれません。
15歳のはずの彼女の容姿はどうみても10歳程度にしか見えず、その出現と消失は人間だとはとても思えません。
エミリーがNWであるのは間違いないと見ていいでしょう。
注意深い人なら、彼女をネクロビジョンで見た時、白く輝くのを見たはずです。
では、彼女は現在、何者なのか?
答えはおそらく、ヘスラーやモ二ークと同じ「自然発生したヴァンパイア」、です。
だからこそ、エンドムービーでエミリーはモ二ークの代わりに、ヘスラーの手を握るのです。
そしてネクロビジョンで白く輝くのは、モ二ークやチャールズたち高次固体NWと同じです。
モ二ークはそうとして、チャールズやエドワードまでが自然発生したNW(ヴァンパイア)なのかどうかはわかりませんが、彼らと同じ存在であることがこれでわかります。
エミリーがなぜ、ロイドの前に度々現れていたのかは謎です。
ロイドたちに警告したかったのか、興味があっただけなのか、それともヘスラーの目と耳として
監視していただけなのか。
そして、なぜ彼女は襲撃された研究所にいたのか…。
ここに、エミリーがいつからヴァンパイアになったのか、の謎が隠されているような気がします。


いろいろと書いてみましたが、実に深い世界観で面白かったと同時に、やはりNWの正体がわからなかったままなのは残念ですね。
続編の話もあるようなのですが、果たして本当に制作されるのかどうか…。

続編に関してですが、1ファンの勝手な思い込みで予想してみると、まず人間VSナイトウォーカーの全面戦争はロイドたちの苦労もむなしく起こってしまい、NWが圧勝していくつかの都市を占領してしまいます。
各都市を支配する高次固体NWを始末する…これがロイドに与えられた使命。ロイドはAIBからは離れ(そもそもすでに存在してない)、民間のレジスタンスに参加して作戦をこなします。
そこへ対峙するNW、そして怪しげな組織に加入しているケリー(笑)。
終盤にはへスラーとエミリーも現れ、今度こそ何らかの答えが導き出される…とかだと面白そうなんですが。

でも、本当は続編出ない方がいいような気もしたりして。今作のラストのエミリーの笑顔だけで十分な気がします。

by overkilling | 2008-02-09 18:15 | ヴァンパイアレイン