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男たちの挽歌

 ジョン・ウー製作総指揮、チョウ・ユンファ主演(?)の「ストラングルホールド」をプレイ。

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 ゲームなのに香港映画「ハードボイルド新・男たちの挽歌」の続編、という、けっこうこの路線って、今後もイケるんじゃ?と夢を見たくなる要素が詰まっております。

 わたくし、このゲームってば次世代機が発売された直後くらいの発売なのかと思ってましたが、2008年の発売でした。ううむ。現在中古屋では下手すると300円くらいで売ってますが、しかし、思ったよりはなかなかの出来、という感じがします。

 グラフィックはそこそこ良いです。ほんとにそこそこ良い。現在のゲームの美麗なグラフィックと比べてはけっこう落ちて見えますが、例えば序盤の香港の雑多な町並みなんかはよく再現されています。
 チョウ・ユンファ演じるテキーラ刑事のキャラもなかなかで、ゲーム中のサイズも大きく、迫力もあります。少々動きがもっさりではありますが…。

 操作系はよく言えばダイナミック、悪く言えば大雑把。大雑把なのは、ゲームシステムもそうなんですが。
 それが悪い印象だけではない勢いがあるので、傑作とまではいきませんがそこそこ遊べるものにはなっている感じです。
 十字キーを入れるだけで発動する特殊ムーブは使い勝手も良いですし、きちんとゲームシステムに組み込まれていて、必殺技然としているのも印象を良くします。

 いまひとつなのが戦闘システムで、基本的にまともに撃ち合っていては体力がいくらあってもかないませんから、スローがかかるテキーラタイムを発動させて戦っていくことになります。
 このテキーラタイム、任意で発動させる他に、手すりを滑り降りるとかカートに飛び乗って移動するとかでも発動できるんですが、一番楽なのがその場でダイブすること。
 特に後半の面では敵の攻撃もかなり厳しいので、終始ダイブしながらの射撃になるんですが、これがステージを重ねていくごとにだんだんとワンパターンに思えてきてしまう。
 もちろん他の手段を使えばいいんですが、しかし敵の攻撃があまりに厳しい。厳しいのでついダイブで済ませてしまう。で、飽きが来る…と、もうちょっとプレイヤーに余裕を持たせてくれれば…という気もしてしまいます。
 おそらくは周回を重ねて上手くなっていろいろ試してくれ、ということなんでしょうが、難易度を上げるとまた難しくなるわけですから、結局はダイブがメインになってしまったりして。
 あと、敵と接近してしまうとシステム的にかなり危険な状態になってしまうのも微妙でした。
 屈強なテキーラの弱点が、敵に近づかれることだったなんて…ゲーム的にもそれがわかっているのか、銃を撃ちながら突進してくる敵キャラもいたりして、見かけると少々恐怖感を感じたりもします。

 また、ボス戦がいくつか用意されているんですが、どいつも少しくらい銃で撃たれたくらいではひるむことさえしない超人的な体力を誇っており、この点ではゲームにリアリティなど欠片も求めていないということがわかります。
 まあ、主人公のテキーラからして絶対に死にそうにないようなキャラなのでリアリティなんて最初から追求してないんですが、それが好意的に感じられるくらいの魅力をテキーラは持っており、絶対に死なない男のゲームとして売り出してもいいんでは?と思うくらい。
 なぜだかこの男が窮地を乗り越えていく様には感情移入してしまいます。

 そういえば、とあるボスの仕掛けが分かりづらく、即死しまくったのはストレスになりました。
 結局、よくわからないままクリアしてたり。テキーラも超人なだけに、ボスの耐久をバズーカ直撃食らっても死なないくらいにしたり、仕掛けによって即死させるとかでバランスを取っているのでしょうが…ちょっとこれも大雑把に思えました。

 戦闘シーンが上記のような感じだからか、ゲームとして飽きさせないような工夫も施されており、「スタンドオフ」と呼ばれる、周囲を敵に囲まれた状態で敵の弾丸を避けつつ射撃する、というミニゲームはテンポも良くなかなかの面白さ。
 ゲーム後半になるとこれもかなり難易度が上がってくるんですが、それでも反射神経だけでも何とかなるくらいではあったりして、テキーラとの一体感もけっこうあります。

 ステージも各面でいろいろ用意されており、前半は移動していくだけで楽しくなってきます。
 しかし後半、ストーリー要素が濃くなってくると、なぜだか同じような構成のステージが多くなってきてしまうのが難点。
 特に、九龍城ステージには必要以上に期待していたのですが、めちゃくちゃアッサリしたステージ展開とともに、そのステージ表現にはかなりガッカリしてしまいました。
 前半ステージと比べると、せっかくの題材をうまく料理できていなかったような…。

 それでもちょこちょことしたアイデアをいくつも盛り込んで、なかなか遊べるものに仕上がっています。
 オブジェクトを破壊してルートを作る、という簡単なアドベンチャー要素もあり、ただ敵と撃ち合いするだけのゲームではなかったりもします。
 ゲーム中に一回だけ、肝心のオブジェクトが表示されないというバグもありましたけどね。

 キャラクターは映画っぽくて良いものの、敵の一勢力のボスであるヤン・ギーとの対決がなかった、というのは至極残念。なんでやねーん。
 あのゴツイ男と、それこそド付き合いのような撃ち合いを演じてみたかったのですが…。

 また、例によってというべきなのか、主人公の奥さんと娘が誘拐された場合、大抵は奥さんが犠牲になる、というパターンも、お約束に漏れず含まれておりました。
 これはまぁもうなんというか、お約束だから仕方がないんでしょうが、しかし、いい加減このパターンも飽きてしまいますな。

 とはいえ、最後まで安心して遊べますし、とにかくテキーラになりきってプレイするべきゲームであると言えます。
 それが出来ないとちょっと単調に思えてしまうのかもしれません。
 出来れば香港映画を何本か観たあとにプレイすると、気分の盛り上がりも違ってくるのではないでしょうか。

 そういえば香港の雑多なステージといい、ダイブしてスローをかける戦闘システムといい、ダブルハンドガンといい、かの「WET」にかなりの影響を与えているゲームだと思うのですが…まあ、だから何だという気もしないでもないですが。

 大作ゲーム好きとか、傑作じゃないと嫌だ、という向きには薦められませんが、佳作でも良質なゲームをプレイしてみたい、という人にはうってつけ。
 中古価格も安いですし、値段の割りに意外な出来の良さが楽しめるゲームだと思います。
 体験版が面白いと感じられれば、やってみる価値は充分にあるゲームだと言えるでしょう。

by overkilling | 2011-05-09 23:53 | ストラングルホールド